東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1054号 判決
被控訴人の本件慰藉料の請求は、被控訴人がその子である秀二の生命を害され精神上の損害を蒙つたことを理由として、民法第七一一条の規定に基きその損害の賠償を求めるものであるから、この場合における「被害者」はすなわち被控訴人自身であつて、秀二ではない。それゆえ、秀二の前記義務違背が本件事故の一因をなしたからといつて、被控訴人に対する慰藉料の額を定めるにつきこれを「被害者」の過失であるとし、民法第七二二条第二項の規定を適用することは許されないものといわなければならない。ただ、慰藉料の額の算定には、加害者および被害者自身に存した事情はもちろん、当該慰藉料請求権の発生に関係ある一切の事情を斟酌すべきであるから、その意味において秀二の前記義務違背の事実も当然斟酌されるべきこととなるのである。
(奥田 牧野 青山)